今回のカタリストは、2018年7月20日公開の細田守監督の最新作『未来のミライ』で映画初主演を務められた上白石萌歌さんです。2011年『東宝シンデレラオーディション』で史上最年少の10歳にしてグランプリを受賞して以来、ドラマや映画、舞台へと活躍の場を広げられてきた上白石さんですが、『未来のミライ』では映画初主演として4歳の男の子・くんちゃんを演じられました。そんな上白石さんの、これまでの物語とこれからのミライについてお伺いしました。
―まずは初めての映画主演ということでおめでとうございます。今回は、どんな経緯で主役に抜擢されたのでしょうか?
ありがとうございます。今年の2月の雪が降った日だったと思うんですが、『未来のミライ』のオーディションに参加をさせていただいたんです。当初はミライちゃん役(主役のくんちゃんの妹)でオーディションを受けていたのですが、私の番が終わって帰ろうとした時に、細田監督からくんちゃん役のオーディションにも挑戦してくれないかってお声掛けいただいたのがきっかけでした。今思えば、そこがくんちゃんとの出会いだったと思うので、すごく貴重な瞬間だったなと思います。
―突然、4歳の男の子役のオーディションを受けることになって戸惑われたんではないでしょうか?
そうですね。一応台本は全体を読んでいたのですが、私はミライちゃんをイメージしていたので。少し練習する時間をいただいたのですが、それでもやっぱり緊張しました。
(C)2018 スタジオ地図
―そこですぐに役が決まったんでしょうか?
いえ、後日正式に、くんちゃん役に決定したというお話しをいただき、もう本当に嬉しかったです。
―決まってからも、4歳の男の子を演じるために事前に準備されたことは何かありますか?
絵コンテを何度も読んで理解しようとしましたし、たまたま保育園に行く機会があったので、そこで実際の4歳の男の子たちと話したり、かけっこしたりといった経験を持てたのですが、とても参考になりました。
―実際の出会いはどんな参考になったのでしょうか?
会うまでは4歳ってもっと幼くて、わがままなイメージだったんですけど、実際会ってみるとちゃんとコミュニケーションもとれるし、『あっ、大人なんだ』って思いました。それまであまり接することがなかったので、実際会うことで無理に幼く演じる必要もないなと感じました。
―すごく良い経験があったんですね。それでもオーディション合格してから1か月後にアフレコだったと思うんですが、色々と準備はしてたけど難しかったことはありますか?
どんなに演技しても、使われるのは声だけなので、ちゃんと自分の声がはまるかなという不安がありました。ドラマや舞台のように、自分の身体や表情を活かせないという点でも心配があったんですが、細田監督から声優としてではなく、俳優としてお芝居してくれたらいいからねと言っていただけて、とても気持ちが楽になりました。
―ご共演された方の中には、声優経験のある方もいらっしゃったと思いますが、何かアドバイスをもらわれたんでしょうか?
はい。声優さんも参加されていたんですが、そこで初めて声優さんのお仕事を本当に間近で見させていただいて、その技術や取り組む姿勢に圧倒されました。本当にその人の声じゃなくって、スクリーンに映る人の声に聞こえてくるような。今までのお芝居では、私自身がその役になりきって、“主観”に寄せながら演じているのですが、声で演じる時はそこにいる対象を遠くで自分が見ているように演じているってお話しも驚きでした。あとは、台本を胸の位置において読みながら、目線を上げずに映像を捉える“視野見”っていう技術も教えてもらったのですが、とても難しくてまだまだ出来ないことばかりでした。
―今までされてきた映画や舞台の芝居と今回の声での芝居はやはり違いましたか?
例えば、舞台とかだとやり直しがきかない世界なので、その独特の緊張感が楽しいですし、空間的なものの大きさや演技の広がり方、演じる時の身体の使い方なんかもそれぞれのお仕事で異なるんですが、表現する・届けるっていう意味では一緒だなと思っています。歌うことも好きなんですが、歌も同じ感覚で臨んでいます。
―上白石さんが初めて映画を客観的に見たときはどんな感想だったのでしょうか?
私が映画として完成された作品を見たのは、実はカンヌ国際映画祭の監督週間でのことだったんです。初めてカンヌに参加したということもあり、その場の雰囲気に圧倒されてしまって、作品を見たり、自分の声を聴いたりするような余裕がなくフワフワした気持ちでした。
―その後落ち着いて見る機会はありましたか?
帰国後に、つい先日なんですが、改めて試写を見させていただきました。自分の声とか意識せずに素晴らしい作品に没頭できましたし、早く皆さんに見ていただきたいなと思いました。
―映画の中でとても印象に残ったくんちゃんのフレーズで『好きくない』という言葉があるのですが、あれは上白石さんが工夫されたりしたんでしょうか?
いえいえ、もともと台本に書いてあったんです。けど、私も言い慣れない言葉で、どこかの方言なのかなって調べたりしたんですよ(笑)。でも聞いたことあるような懐かしい響きがあって、かわいいですよね。私もあの言葉気に入っています。
―本当に4歳のお子さんが言いいそうで、けど少し変わった感覚の言葉で可愛かったです。ぜひこれを読まれている方には映画を見て、その可愛さを感じていただければと思います。今まで映画のお話についてお伺いしてきましたが、『未来のミライ』がテーマにしている“家族”。上白石さんにとって、家族の大事にされている物語はありますでしょうか?
この作品に通ずる部分もあるかもしれませんが、私が小学校1年生から3年間、父の仕事の関係で家族一緒にメキシコに住んでいたことがあるのですが、メキシコって亡くなった人をとても大事にする文化があって。メキシコの伝統行事として、死者の日っていうのがあるんですが、日本のお盆にとてもよく似た感じで、亡くなった人の魂がその日だけ帰ってくるという日なんです。その行事を家族で経験したから、両親もご先祖様のことをとても大事にしていて、今も実家の鹿児島に帰省した時は家族みんなでお墓参りに行くんですが、そういったことは私の中でも大事な家族行事になっています。
―では最後に上白石さんが実現してみたいミライについてお伺いさせてください。遠く離れた夢、というよりは今の延長線上にあるけど、少し遠いそんなミライはありますか?
私は舞台がすごく好きで、舞台って独特の緊張感があって、しかも上手くいかなくてセリフを噛んでしまうこともあるんです。もちろん、そういったことは無い方がいいんですが、そんなことも起こりうるようなライブ感がとっても大好きなんです。そして、今回細田監督にカンヌ国際映画祭に連れていっていただいたこともすごく影響が大きかったのですが、やっぱりまだまだ自分の知らない世界の広さを実感したし、もっと視野を広げていきたいなっていう想いがあります。そういうこともあって、語学も頑張って勉強しています。
―では、ミライは海外で舞台に立たれることですか?
米倉涼子さんがブロードウェイに挑戦されているのも見ていて、とてもカッコいいなぁと思ったので、いつかやってみたいですね。
―素敵ですね。プライベートでやってみたいミライはありますか?
だったら、気球に乗りたい(笑)。小さな頃からの本当に純粋な夢なんです。いいですよね、あの感じ。火を灯して、その力で気球が膨らんでいってフワフワとどんどん地面を離れていく。あそこに乗れたら最高だろうなと思うんです。私、高いところも好きなんです。飛行機に乗っても、通路側ではなく窓側に座って、ずっと窓に張り付いていて、外を眺めているのが好きなんです。あと、海外だったと思うんですが、広い場所にいっぱいのカラフルな気球が飛ぶイベントみたいなものがあるのですが、あれに行ってみたいですね。
―そのピュアなミライも素敵ですね。ぜひ、新しく始まるミライブックに書いてみてください。そのミライが叶うかもしれません(笑)。
それいいですね(笑)
―今日はお忙しいところありがとうございました。上白石さんには、「ミライブック」キャンペーン(詳細はコチラ)で皆さんにプレゼントさせていただくサインも頂き、本当にありがとうございます。
こちらこそ、ありがとうございました! ぜひ皆さん、劇場までくんちゃんに会いに来てください!